畜産技術/技術肉牛

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成果情報
「改良型のモミガラ深敷き型カーフハッチによる子牛の省力管理

 子牛の哺育用カーフハッチの下部を改良し、敷料として無処理のモミガラを30cmの深敷きにすると、湿潤化やふん尿による汚れの進行が極めて緩徐となり、ハッチでの飼育期間中は、敷料を交換することなく、快適環境が保持できます。

 肉用素牛を低コストで生産するためには、子牛の育成率の向上が重要です。病気への抵抗力の弱い哺育期の子牛をカーフハッチで飼育することで、損耗の低減を図ることができますが、カーフハッチ内はふん尿による湿潤化や汚れが早くから進み、頻繁な敷料交換が欠かせません。敷料交換には多大な労力を必要とするため、作業の軽減化がハッチ飼育における技術的な課題となっています。
 平成8年から10年にかけて、モミガラの通水性、通気性に着目し、和牛子牛を飼育した場合のカーフハッチ内の汚れの減少と省力管理について検討したところ、良好な結果が得られましたので紹介します。

(側面壁を取り外した内部)
図1  子牛を収容して間もない状況

改良型カーフハッチの構造
 改良型カーフハッチは、従来のハッチに深さ30cmの敷料枠を設けただけの、簡単な構造です。
 奥行240cm幅120cmのハッチ1基に用いるモミガラは、約0.8m3となります。これに7日齢の離乳した子牛を収容します(図1)。

敷料の湿気と汚れの状況
 目で観察した敷料の汚れは、はじめの2カ月間は極めて汚れの進行が緩徐でした。
 敷料の水分は徐々に増加しますが、表層部では3カ月後でも約30%と新しいおが粉とかわらない程の水分でした(図2)。
 牛体の汚れは、2.5カ月以降に蹄表面に汚物の付着がみられた以外は、飼育期間中ほとんどみられませんでした。
 敷料の交換、補充は、子牛収容期間中全く不要で、使用後の敷料も軽く、作業の軽減化ができました。

図2  敷き料の水分含量の推移
成果の活用面・留意点
 3カ月間にわたり湿気や汚れが極めて少ないことから、衛生状態や保温性の面で優れていて、敷料交換や補充を必要とせず極めて省力的です。
 従来の稲わら追加方式では、約40kg程度の稲わらが必要ですが、この方式では、敷料経費が節減できます。
 ハッチ下部への枠の設置は自作が可能で、経費は僅かで済みます。
 この技術は簡単に導入できます。
 乳用子牛の哺育にも活用が可能です。
 ただし、飼育全期間を通じ、敷料の表面が軟らかいため、長期間飼育した場合は、肢蹄への悪影響の可能性が考えられます。このため、利用は3カ月齢を越えないことに留意する必要があります。

畜産技術振興センター便り 平成12年9月号より

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