うし

乳牛

乳牛の種類
 乳牛でおなじみなのが、白黒模様のホルスタイン種です。ホルスタイン種は乳量が多く、性質も穏やかなので、日本では最も多く飼育されています。その他、乳脂肪率が高く、褐色の毛をしたジャージー種、褐色の毛に白色の模様の入ったガンジー種などが少数ですが飼育されています。

乳牛の飼育
 乳牛はヨーロッパ原産のものが多く、暑さや湿気が苦手です。実際に、夏は乳量が少なくなり、反対に冬は多くなります。そのため農家では窓を開けたり、換気扇を幾つも回したりして空気の流れをつくり、換気を行っています。
 乳牛のエサは主に乾草(
粗飼料という)と、様々な穀物を混ぜたもの(濃厚飼料という)です。草が生えている時期には牧草地に放牧され、1日を過ごすこともありますが、ほとんどが牛舎の中で飼われています。
 搾乳は一般的に朝と夕方の2回行われ、牛1頭が出す牛乳の量は個体差はありますが1年間で約7000kg以上にもなります。病気の予防のため、搾乳の時の消毒には細心の注意が払われます。

乳牛の一生
 雌牛は16ヶ月ほど育成されると、人間の手で人工授精されます。人工授精は受胎率の高さと、病気の予防などの面から、現在ではほとんどの牛に行われています。妊娠して10ヶ月ほど経つと、子牛が誕生します。子牛は生後約2ヶ月間保育されますが、そのうち母牛と一緒に飼われるのは最初の1週間ほどで、その後は人工乳と乾草で育てられます。産まれたのが雌牛なら、搾乳牛として飼育されますが、雄牛は搾乳することができないので、去勢され、肉牛として育てられます。
 乳牛は妊娠し、出産して初めて牛乳を出します。子牛を出産後、約300日間毎日搾乳をしますが、その量は次第に減少していきます。その後は次の出産のために2〜3ヶ月搾乳をやめて休憩させ、妊娠、出産、搾乳、休憩、また妊娠・・・・というサイクルを4回ほど繰り返したあと、搾乳牛としての役目を終え、肉牛とされます。日本で食べられている食肉のうち、乳牛(雄牛と搾乳を終えた雌牛)の占める割合は半分ほどにもなります。

乳製品が食卓に届くまで
 搾乳された生乳(牛乳として製品になるまでのものを生乳と呼びます)はそれぞれの酪農家のバルククーラーで冷やされます。温かい生乳は細菌の培地になるため、搾乳機で搾られた生乳はそのままバルククーラーへ運ばれます。冷やされた生乳は集乳車(タンクローリー)でそれぞれの農家から集められ、集乳場や加工場に運ばれます。ここではまず細菌数や抗生物質が残っていないかなどの検査が行われ、さらに色や風味、脂肪率、無脂乳固形分などの測定をします。合格がでた生乳から細かいゴミや白血球などを分離し、再度冷やされます。その後、それぞれの乳製品として加工されていきます。

肉牛

肉牛の種類
 日本の肉専用種、いわゆる和牛と呼ばれるものには幾つか種類があります。黒毛和種、無角和種、褐毛和種、日本短角種がそれですが、このうち最も多く飼われているのが黒毛和種で、全体の9割を占めています。また、肉質のいい黒毛和種と、体の大きい乳用種を交配させた交雑種も多く飼われるようになりました。外国の牛にはアンガス種、ヘレフォード種などがありますが、日本ではほとんど飼われていません。

肉牛の飼育
 牛は、昔は農家で田畑の農耕作業や運搬用に飼育されていましたが、戦後機械が登場したことにより、その役目から退いていきました。その後、肉牛としての改良がされ、現在の和牛ができました。
 肉牛は牛舎の中で放し飼い(仕切り等はされる)されています。より良い牛肉をつくるため、農家は栄養価の高いエサをそれぞれの工夫でバランスよく与え、適度に運動をさせます。肉牛農家には、子牛を産ませ、他の農家に売るといった
繁殖農家、他の農家から子牛を購入し、肥育させる肥育農家、そして子牛生産から肥育までを行う一貫農家があります。

肉牛の一生
 雌の肉牛は生後16ヶ月ほどで初めて妊娠させますが、この方法は乳牛と同じく人工授精によるものがほとんどです。雌牛は約285日で出産し、生まれた子牛は5〜7ヶ月間母牛と暮らします。雄牛は生後2ヶ月ほどで去勢します。去勢はすることにより肉質が良く、太りやすくなり、さらにおとなしくなるので、現在肥育される家畜のほとんどに行われています。離乳した子牛は肥育牛として育てられます。肥育牛として飼育される肉牛は約20ヶ月肥育され、出荷されます。繁殖用の雌牛もその役目を終えると出荷されます。

牛肉が食卓に届くまで
 出荷された肥育牛は、と畜場に運ばれ、1頭づつ病気でないか、怪我をしていないかなどを検査し、検査を通った牛はと畜されます。と畜する際には、全ての牛にBSE(牛海綿状脳症)の検査が行われ、疑いのある牛は肉にはされず、全て焼却処分されます。
 と畜されると肉の
格付けが行われます。と畜され縦半分に切られた牛(枝肉)は、ロース芯面積、ばらの厚さ、重さ、皮下脂肪の厚さの4項目をみてA(良い)、B(普通)、C(良くない)の三等級に分けられます。(これを歩留等級といいます。)さらに、脂肪交雑(サシ)、肉の色沢、肉の締まり、脂肪の色と質の4項目をみて5(良い)〜1(良くない)の5等級に分けられます。(これを肉質等級といいます。)この歩留等級と肉質等級により値段が大きく変わります。格付けされた牛肉は、精肉店で切り落とされ、精肉として販売されます。